こんにちは、RISKYBRANDのストラテジスト、アポリーヌ・コアトです。
今回は、私が参加したフューチャー・ロンドン・アカデミーが運営するオンラインコースの「Future of Branding Week Live」について、レポートしたいと思います。
Future of Branding Week Liveには、世界レベルのエージェンシーが使用している最先端のフレームワークを学び、自らの業務に活かそうと、世界中からCMO、ブランドストラテジスト、クリエイティブディレクター、マーケティングの責任者など様々な分野のクリエイターが参加しました。
このプログラムは、本来であれば今年7月にロンドンで開催される予定でしたが、新型コロナウィルスの世界的流行を受けて、延期されていました。
これを受けて、フューチャー・ロンドン・アカデミーは、Zoom、Miro、Whatsappなどのツールを活用し、オンラインでの開催を実現させました。
私にとっては、プログラムの内容はもちろんのこと、主催者が「世界中の創造的な人々を団結させ、インスピレーションを与える」という本来の目的を変えることなく、プログラム全体をオンラインで実施するということ自体も非常に興味を惹かれ、RISKYBRANDを代表して参加することを決めました。
この記事では、全5日間で実施されたプログラムの概要を私見を交えて、共有します。 そして、今後は各マスタークラスの内容をさらに掘り下げた記事もご紹介していきたいと思いますので、ご期待下さい。

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コンテンツとスピーカー

1日目
「Future of Branding Week Live」はエクスペリエンスデザインエージェンシー、イマジネーションのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター、アントニー・パーハム氏によるクラスで幕を開けました。
イマジネーションは1968年に設立された独立系のグローバル・エクスペリエンス・エージェンシーで、ブランド・エクスペリエンスの世界的権威として知られ、アナリティクスデータをクリエイティブに活用し、作品のインパクトを測定することで有名です。
アントニーさんは、人々の記憶に残る体験を設計し、ロイヤルティを構築するための実践的なヒントとフレームワークを用いて、戦略立案から発信まで、関係する複数のセクションやタッチポイントを横断し、アナログとデジタルの境界を曖昧にしていく方法についてレクチャーしました。

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彼のレクチャーのポイントは、私たちはモノや情報が溢れ、窒息してしまいそうなくらいに窮屈で、機械化された社会を生きているということです。そのようなノイズを振り払うために、ブランドは人々が切望している、より意味があり、人間的な、本物のストーリーを訴求していくということでした。
中でも特に興味を惹かれたのは、このアイデアを私たち自身が体験する機会を設けていたことです。アンソニーさんは、消費者の期待の変化について説明するために、私たちが受講時に着用していた洋服の購入動機について簡単なアンケートを実施しました(私はユニクロのレギンスとスローファッションのフランスのブランドHabileのセーターを着用していました)。

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私の答えはオレンジ色の部分です。これを見ると、私がいかに典型的なミレニアル世代の考え方に基づいて購入を決めているかを知ることになりました…。

その上で、より“人間らしい”体験を効果的かつ信頼できる方法で生み出すための実践的なヒントを紹介されました。
その一例として提示されたシェルの環境についての取り組み(シェルエコマラソン)では、「石油会社が環境問題のことを言うなんて…」と言う消費者の冷笑的な考えを、シェルが環境保護活動において信頼できる存在であるという考えに変えるために、パーソナライズされ、没入感のある楽しい方法を用いたことが示されました。
このようなアントニーさんの話は、私がフランス商工会議所で行った「消費者のシニシズム」が広がる中で、ブランディングにおいて信憑性を高めることが求められていることについての講演にも通じるものがありました。
また、明確に定義されたパーパスを持たず、それに沿って行動していないブランドは取り残されてしまうと確信しており、クライアントワークの中で、「行動する」こととそれを「続ける」ことが最も難しいと感じています。
これは私たちにとっても継続的な課題であり、だからこそ、他のエージェンシーがどのようにこの課題に取り組んでいるのかを見ることができたことはとても刺激になりました。

2日目
2回目のマスタークラスは、ディアジオのグローバルデザインディレクターであるジェレミー・リンドリー氏が講師を務めました。エージェンシーとクライアントの両方でデザインをリードしてきた30年の経験から、デザインエージェンシーとクライアントがどのように協力してより強力なブランドを構築していくかについて、彼の考えをレクチャーしました。
私を含めた参加者のクライアントとの経験を振り返った後、ジェレミーは、一人の天才デザイナーの神話を楽しむのではなく、クライアントとエージェンシーの間で「共創」のマインドセットを育むことの重要性を強調しました。

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彼は、どんなに素晴らしい仕事をしていても、スーパーヒーローのようなデザイナーの考え方をするようなエージェンシーとは仕事をしないと話し、「アベンジャーズが集まれば、結果は常に高くなる」という例えは、とてもしっくりくるものでした。
彼はその後、クライアントがエージェンシーに来るときに何を求めているのか、より良いクライアントになるにはどうすれば良いのか、そして効果的なクライアントとエージェンシーの関係を構築し、維持するために彼が使用しているフレームワークについてのヒントを与えてくれました。
私が最も共感したのは、クリエイティブなスキルだけでは素晴らしい仕事はできないという考えです。クライアントにも役割があり、「彼らも相応の仕事を得る」(Ogilvy氏の言葉を引用)のだと。これはつまり、最終的なアウトプットは双方に責任があるということです。
ジェレミー氏は、私がクライアントとの関係性の中で「アベンジャーズが組み立てる」ストーリーを取り入れ、単なる戦略家ではなく、良きガイド、良きリスナーにならなくてはならないと、私を奮起させてくれました。

3日目
3日目のマスタークラスは、Airbnb、Facebook、Netflixのカスタムフォントを制作し、最近では楽天のフォントファミリーを発表した世界的に有名な書体スタジオ、Dalton Maagが担当しました。同スタジオのクリエイティブ・ディレクターであるビアンカ・バーニング氏は、カスタムフォントを制作する「タイポグラフィー研究所」の開発プロセスと、タイポグラフィーが消費者のブランド認知にどのような影響を与えるかについてレクチャーしました。
想像していた以上に、フォント開発のプロセスは非常に複雑で、フォントの方向性を決めるのに必要な調査や議論の量が多いことには、ただただ驚かされました。。

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ダルトン・マーグによるフォント作成プロセス

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ダルトン・マーグによるBBCのためのアイデアワークショップ

ビアンカ氏のプレゼンを聞くにつれて、RISKYBRANDで書体を扱っている同僚デザイナーの仕事にも改めてリスペクトを感じました。また、タイポグラフィはブランディングデザインに欠かせないものであり、より極端に言えば表現手段そのものであることを改めて強く感じさせられました。

~ To be continued~来週リリース予定の[後編]では4日目と5日目で実施されたプログラムの内容もご紹介していきたいと思いますので、ご期待下さい!