リスキーブランドが実施する生活意識調査MINDVOICE®2011-2018年のデータを分析した「SNSユーザー動向」について報告いたします。

PDF: RB_MV_REPORT_181024.pdf

サマリー

  1. LINE、Twitter、Instagramは伸長。Facebookは失速。
  2. Facebookは若者離れが顕著。
  3. ユーザーの年齢層・価値観・用途によってSNSの棲み分けが出来つつある。

1. LINE、Twitter、Instagramは伸長。Facebookは失速。

15-64歳の日本人男女個人(N=4,395)を対象にしたこの調査データを使って、主要SNSのアクティブユーザー(「日常的に活用している」人)の分析を行いました。

CHART 1は、主要SNSのアクティブユーザー率(全体に対するアクティブユーザーの割合)の推移を示したチャートです。日本人の5割以上をアクティブユーザーとして獲得したLINEをはじめ、Twitter、Instagramの3ブランドは順調にアクティブユーザーの数を伸ばしています。一方で、Facebookは2015年のピーク(19.5%)から失速しており、2018年では16.9%と、0.5ポイントの違いながら、Instagram(17.4%)の後塵を拝する結果となりました。

2. Facebookは若者離れが顕著。

CHART 2は、年代別にみたFacebookのアクティブユーザー率の推移を示したものです。

このチャートを見ると、Facebookは45歳以上の中高年層の支持は依然拡大傾向にあるものの若い世代からの支持を失いつつあり、特に15-24歳の年齢層では減少幅が大きく、2013年では15-24歳の28.0%がFacebookのアクティブユーザーだったのが、2018年では10.7%にまで落ち込んでいます。

逆に、15-24歳の年齢層から支持を急速に集めているのがInstagramです。CHART 3は、年代別にみたInstagramのアクティブユーザー率の推移を示したチャートです。

このチャートを見ると、15-24歳の年齢層でのInstagramのアクティブユーザー率は2015年の8.0%から、2018年では32.0%と急速に支持を集めて、これに呼応するように他の年齢層でも支持を拡大しつつあります。

3. ユーザーの年齢層・価値観・用途によってSNSの棲み分けが出来つつある。

A. 年代による違い

CHART 4は、主要SNSアクティブユーザーの年代構成を示したチャートです。
このチャートを見ると、LINEは幅広い年代層に受け入れられ、TwitterとInstagramは15-24歳の若年層に、Facebookは45歳以上の中高年層にそれぞれ強いことが分かります。

B. 価値観による違い

CHART 5は、価値観による主要SNSのアクティブユーザーの違いをプロットしたマップです。

チャート内の2つの軸は、生活者の価値観を示すものです。縦軸は「多様性を求める」のか「変化を嫌う」のかを示し、横軸は「内向的」なのか「外向的」なのかを示します。
*詳細は「資料1. 価値観MAPについて」を参照

このチャートを見ると、InstagramとFacebookは、チャートの中心点(日本人全体の中心点)から右上にプロットされ、TwitterとLINEは左上にプロットされています。

これらの主要SNSユーザーは、いずれも変化/多様性を求める価値観をもっていることが共通点ですが、InstagramとFacebookのユーザーは外向的な価値観、TwitterとLINEのユーザーは比較的内向的な価値観を持っているという違いがあることが分かります。

C. 用途による違い

それぞれのSNSアクティブユーザーがそれぞれのSNSをどう活用しているのか、その用途を見てみました。

まず、SNSの特徴である「情報発信用途」では、Twitter、Instagram、Facebookのユーザーの2~3割程度がそれぞれを活用(CHART 6参照)しており、LINEは「情報発信」用途としてほとんど活用されていないものの、SNSの用途として最も大きい「連絡用途」ではユーザーの85%が活用(CHART 7参照)し、他のSNSを大きく引き離しています。

このことから、LINEは「連絡用途」として、Twitter、Instagram、Facebookは「情報発信用途」としてのポジションを分け合っていると言えるでしょう。特に、アクティブユーザーが最も多いLINEユーザーの85%が「連絡用途」としてLINEを活用しているということは、SNSの用途として最も需要が大きい「連絡用途」のポジションをLINEがほぼ独占していると言っても過言ではありません。

次に「趣味情報用途」を見てみると、TwitterとInstagramのユーザーの共に49%ずつがそれぞれのSNSを活用(CHART 8参照)しており、「趣味情報用途」のポジションはTwitterとInstagramが分け合っていることが分かります。

また、他のSNSユーザーを引き離し、Twitterユーザーの3割が「ニュースチェック用途」として活用(CHART 9参照)しており、「ニュースチェック用途」のポジションはTwitterが獲得していると見ることができます。

D. まとめ

上記の分析をまとめると、ユーザーの年齢層・価値観・用途によってSNSの棲み分けが出来つつあることが分かります。

LINE:連絡用途のスタンダード
LINEは、連絡用途でダントツであり、同時に情報発信や趣味性などの用途は少ないことも特徴です。ユーザーの年代層も幅広く、日本人の5割以上がLINEのアクティブユーザーであることを考えると「連絡用途」のデファクトスタンダードとしてのポジションを獲得していることが分かります。
コミュニケーションを円滑化する親しみやすいスタンプ機能をはじめとする様々な機能が「連絡用途」としてのポジションを強いものにしていると思われます。
企業にとってLINEは、連絡用途というメジャーなプラットフォームを使った様々なサービスを展開できる可能性をもったメディアと位置付けられるでしょう。

TWITTER:内向的な若年層の趣味とニュースの受発信手段
Twitterは若年層で内向的な価値観の人のためのSNSというポジションを得ていると言えるでしょう。趣味の情報やニュースが入手でき、情報発信用途でも活用されています。
匿名で投稿でき、つぶやき形式の短い文章を中心としたスタイルは、現在の社会トレンドである「冷笑主義/シニシズム」*注)の特徴の1つ、「社会とは一定の距離を置く」というニーズに合致したメディアと言えるでしょう。
企業にとってTwitterは、自社サービスを読者の趣味に関連させたり、新製品や新サービスのニュース発信のために有用なメディアと位置付けられるでしょう。

Instagram:外向的な若年層の趣味の受発信手段
Instagramは、若年層で外向的な価値観の人のためのSNSというポジションを得ていると言えるでしょう。趣味の情報が入手でき、情報発信用途でも活用されています。
あまり複雑なテーマには触れず、お気に入りの画像や動画をアップしたり、自分の趣味にあったテーマや著名人の画像や動画に手軽に触れることができるスタイルは、現在の社会トレンドである「冷笑主義/シニシズム」*注)の、もう1つの特徴「刹那的に生きる」というニーズに合致しているメディアと言えるでしょう。
企業によってのInstagramは、画像や動画を使って自社のブランドイメージを高めるために有用なメディアと言えるでしょう。ブランドロイヤルティの向上にも寄与することが推測できます。

Facebook:外向的な中高年層の自己表現手段(発信中心)
Facebookの特徴は、中高年に支持されている唯一のSNSです。一方で、Facebookは、どの用途でも一定の利用がなされているものの、際立って高いものはありません。連絡用途も61%のアクティブユーザーが利用していますが、85%のLINEに大きく引き離されています。

「情報発信用途」では一定の活用はあるものの、「趣味情報用途」や「ニュースチェック用途」など共通のテーマでの活用率は高くありません。Facebookでは、共通の関心領域と関係なく情報発信がなされているようです。

つまり、Facebookは、(受け手の関心領域とは関連しない)個人的な近況報告やリア充自慢など、外向的な中高年層の自己表現手段(発信中心)というポジションを得ていると言えるでしょう。

若年層を中心にアクティブユーザーが減少している理由もこのポジションが影響していると考えられます。個人的な近況報告やリア充自慢は、若年層のニーズとは遠いでしょうし、TwitterやInstagramのような「冷笑主義/シニシズム」*とも縁遠い用途です。
上記のポジションを考慮すると、企業にとってのFacebookは、旅行や資産形成、引退後の娯楽など、中高年を対象とした情報メディアとして有用なメディアと言えるでしょう。

ただ、中高年市場では企業の信用力が重要な要素だとすれば、2018年春の個人情報不正流出事件やFacebook社の初期対応の拙さは、中高年市場でのマーケティングではマイナスに働くリスクがあります。信用力の回復に向けた真摯な活動が行われれば、Facebookは、中高年市場でのポジションをより強いものにできるでしょう。

 

*冷笑主義/シニシズム

社会や権威には冷めた目線で接し、先のことを深く考えるよりも、今の状態を楽しもうとする価値観
詳細は、生活者分析「冷笑主義」に向かう日本人。(この10年の社会的価値観の変化) July 18, 2018.」参照
https://www.riskybrand.com/research/mindvoice_180717/


 

資料1:価値観MAPについて

価値観MAPは、価値観を測定した47の変数を主成分分析という統計手法から抽出された2つの軸(主成分)によって作成されました。

縦軸(第1主成分)は、変化や多様性に対する関わり方を示し、上方は「変化/多様性を求める」する意識、下方は「変化を嫌う」意識を意味します。

縦軸上方【変化/多様性を求める】の主な説明変数(主成分負荷量、上位3変数)
– 自分と違う価値観や意見をもっている人と、できるだけ多く知りあう機会を増やすように行動している
– 例え自分の立場や利益にマイナスになることでも、人や社会の役に立つことを実行するようにしている
– 世界の遠い地域の事件や出来事とその結末に対して、強い興味・関心がある

縦軸下方【変化を嫌う】の主な説明変数(主成分負荷量、上位3変数)
– 男性同士、女性同士の結婚には反対だ
– できることなら、他人とかかわり合いをもたないで過ごしたい
– 日本人は世界の中でも優れた民族だと思う

横軸(第2主成分)は、内向きの価値観なのか外向きの価値観なのかを示し、左方は「内向的」、右方は「外向的」な価値観を意味します。

横軸左方【内向的】の主な説明変数(主成分負荷量、上位3変数)
– 自分の気持ちを癒してくれる何かが欲しい
– できることなら、他人とかかわり合いをもたないで過ごしたい
– 他人がどうなろうと、どういう生き方をしようと自分には、全く無関係だと思う

横軸右方【外向的】の主な説明変数(主成分負荷量、上位3変数)
– 同性でも異性でも・年上でも年下でも、すぐに仲良くなれる方だ
– 緊張した場面でも、ちょっとしたジョークを言ったりして、場を和ませるのが得意な方だ
– 値段の高いものや高級なものを身に付けることが多い

資料2.分析に使用した調査の概要

調査対象: 全国15-64歳男女個人(世帯年収300万円以上)
調査手法: インターネット調査
サンプル数:
2011年 N= 4,028
2012年 N= 4,181
2013年 N= 4,267
2014年 N= 4,239
2015年 N= 4,272
2016年 N= 4,367
2017年 N= 4,361
2018年 N= 4,395


本リリース調査結果に関するお問い合わせ:
株式会社リスキーブランド 広報担当
Email: info@riskybrand.com


株式会社リスキーブランドについて

株式会社リスキーブランドは、2001年創業のブランドコンサルティング・ファームです。顧客心理分析を強みに、高級車、ビューティ、高級ホテルでの実績をはじめ、戦略作りからブランディング・デザインまでのブランディングサービスを提供しています。
ホームページ : www.riskybrand.com

[News一覧に戻る]
[MINDVOICE®に戻る]