ニューラグジュアリー市場伸長の背景として、新富裕層の台頭、贅沢に対する価値観の変化などがあげられます。
株式会社リスキーブランドは公開情報及び当社が実施するMINDVOICE®調査結果をとりまとめた「新富裕層、ミレニアル世代が牽引するニューラグジュアリー市場」を発表いたします。

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CONTENTS

  1. 新富裕層が増えている。
  2. ミレニアル世代がニューラグジュアリー市場を牽引。
  3. ニューラグジュアリーは第3世代の贅沢心理。「”善”の顕示」がキーワード。

 

I. 新富裕層が増えている。

ニューラグジュアリー市場の成長を支える要因の1つは新富裕層の台頭です。その背景には、ITをはじめとする新産業の躍進に伴う一部の層での給与水準の上昇、高額の遺産を相続する人の増加などいくつかの要因が考えられます。

1. 給与所得1,000万円超の人口は5年間で約3割増加。

国税庁「民間給与実態統計調査」によると、年間給与所得が1,000万円超の人口は、2012年から2017年にかけて、172万人から222万人と5年間で29%上昇しています。(CHART 1参照)
Chart1
ここでいう給与所得者とは、1年を通じて勤務した非正規含む従業員・役員のことを指し、失業者・自営業・個人事業主・個人農家・無職/引退などは含みません。総務省統計局「労働力調査」によると国内の労働力人口は6,711万人(2017年平均)ですから、ここでいう給与所得者の総数である約4,945万人(2017年)は、労働人口の74%を占める計算です。

年間1,000万円を超える給与所得者は2012年から2017年にかけて29%増加しており、これは給与所得者総数の伸び(約9%)よりも大幅に増加していることが分かります。

2. 特に、2,000万円超の高額所得者が急増。

このデータを詳しく見てみると、中流以上、特に2,000万円超の高額所得者が増加していることが分かります。(CHART 2参照)
Chart2
CHART 2は年間給与所得者を収入階層別に5つに分類し、2012年から2017年にかけてのそれぞれの人口伸長率を示したものです。

全体の5割を超える400万円以下の人口はほぼ横ばいですが、それ以上の階層ではおしなべて二桁の増加率を示し、特に2,000万円を超える階層は2012年から2017年にかけて152%の伸長率を示しています。

こうした高所得者の急速な増加は、新富裕層としてニューラグジュアリー市場の形成に寄与していると考えらえます。

3. 高額の資産を相続する人が増加。

別の角度からみると、国税庁「統計年報」によると1億円を超える資産の相続に関わった法定相続人(相続を受ける人)の数はここ数年増加傾向にあります。(CHART 3参照)
Chart3
国税庁によると2017年に相続される資産(申告ベース)の総額は17.2兆円、法定相続人の数は約41万人ですから、単純計算すると、この1年だけで41万人が一人当たり平均4,194万円の相続を受けた計算(課税前)になります。

高齢化の進行に伴い、死亡者数は今後も更なる増加が予想されます。(CHART 4参照)
Chart4
厚生労働省「人口動態統計の年間推計/平成 29 年(2017) 」「国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によると、日本の総人口は減少基調にある中、死亡者数は2006年(108万人)から2018年(136万人)にかけて25%、2018年からピークの2040年(167万人)にかけてはさらに23%増加すると予想されています。相続を受ける人は減少し、相続資産を残す人は増加するわけですから、マクロ的な観点では、今後相続される一人当たりの資産の規模は増加することになります。

4. 全体に底上げされた生活の程度。

社会問題としての所得の二極化は深刻な課題ですが、意識面で見てみると、日本人の生活の程度は2001年以降も上昇基調にあります。(CHART 5参照)
Chart5
内閣府「国民生活に関する世論調査」によると、自身の生活の程度を「上(中の上+上)」と考える人は2001年の10.2%から2018年では15.2%と5ポイントの上昇、「下(中の下+下)」と考える人は同じく31.5%から25.3%の下降という内容になっています。

こうした意識面での生活の程度の向上は、ニューラグジュアリー市場が成長する土壌を形成していると考えられます。

資料1:国税庁「民間給与実態統計調査」
資料2:総務庁統計局「労働力調査」
資料3:国税庁統計情報:直接税「相続税」
資料4:厚生労働省「人口動態統計の年間推計/平成 29 年(2017) 」
資料5:総務省統計局「人口推計」
資料6:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」
資料7:内閣府「国民生活に関する世論調査(平成30年度)」
 

II. ミレニアル世代がニューラグジュアリー市場を牽引。

新富裕層の台頭に加えて、ニューラグジュアリー(新贅沢)市場伸長の背景には、ミレニアル世代(※注1)の存在が大きく影響しています。
ここでは収入面と価値観という側面で、ニューラグジュアリー(新贅沢)市場とミレニアル世代との関係を整理してみました。

※注1.本レポートでは、ミレニアル世代は1980年から1994年生まれ(2019年の25-39歳の年齢層)と定義しました。

1. 30代の世帯年収の増加。

30代は、現在のミレニアル世代の中心的な年齢層です。世帯主の年齢階級別に見ると、世帯主が30代の世帯での世帯年収の伸びが大きく、2010年から2016年にかけて115%の伸長率を示しています。(CHART 6参照)。
Chart6
厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、世帯主の年齢階級別に、2010年から2016年にかけての世帯年収と伸長率は次の通りです。
table1

2. ダブルインカムの増加が背景に。

ミレニアム世代の中心である30代の世帯年収が伸びている背景には、共働き世帯の増加が挙げられるでしょう。(CHART 7参照)
Chart7
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)/統計情報によると、共働き世帯の増加は1980年代以降長期的なトレンドであることに加え、2012年以降も急速な伸び率を示しており、共働き世帯は2012年の1,054万世帯から2018年の1,219万世帯へと、6年間で16%増加していることが分かります。

3. 女性の結婚や出産後の就業継続率も上昇。

結婚後や第1子出生後も就業を継続する女性が増加しており、ダブルインカムのトレンドを下支えしています。(CHART 8参照)
Chart8
国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」によると、特に第1子出生前後の就業率の上昇が顕著で、2005-2009年から2010-2014年にかけて40.4%から53.1%へと大きく上昇しています。今後も、「働き方改革」や「子ども・子育て支援法」の改正などの追い風を受けて若い世代のダブルインカム化は更に加速すると予想されます。

4. ミレニアル世代は、肩ひじ張らず、ソフトに贅沢を楽しむ世代。

MINDVOICE®調査を使った価値観分析によると、ミレニアル世代の価値観は、肩ひじ張らず、ソフトに贅沢を楽しむという傾向にあり、彼らにとっての贅沢の概念は、優越感よりも「自由・解放感」にあります。(CHART 9参照)
Chart9
ミレニアル世代はダブルインカムの増加等に伴う世帯年収の上昇に加え、彼らの価値観や贅沢に対するスタンスの違いが、ニューラグジュアリー(新贅沢)市場形成の大きな要因となっていると言えるでしょう。

ミレニアル世代の価値観分析については、「ミレニアル世代はソフトに贅沢を楽しむ。キーワードは自由・解放感。」(2019年6月25日)をご参照ください。https://www.riskybrand.com/research/mindvoice_190625/

資料8:厚生労働省「平成29年国民生活基礎調査」
資料9:独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)/統計情報「専業主婦世帯と共働き世帯」
資料10:国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」
 

III. ニューラグジュアリーは第3世代の贅沢心理。「”善”の顕示」がキーワード。

ラグジュアリー市場を左右する生活者の贅沢心理は時代によって変化してきたと言えます。本レポートのテーマであるニューラグジュアリーは、第3世代の贅沢心理と位置付けられます。

1. 第1世代の心理=消費の顕示

バブル期までの贅沢心理は「消費の顕示」だと位置付けられます。好景気を背景に、自動車や家電製品など多様な製品群が国内消費を賑わせ、1978年のルイ・ヴィトンの日本市場参入(日本での店舗オープン)をはじめ海外からの高級ブランドが日本人の購買欲求を刺激しました。こうしたトレンドは、家計最終消費支出が急速に右肩上がりを示した1980年代までの社会背景と符合します。(CHART 10参照)
Chart10
「消費の顕示」とは、高級車・高級家電、高級ファッションブランドを所有したりと「消費」を通じて、一目置かれる存在を目指す心理を示します。

2. 第2世代の心理:経験の顕示

バブル崩壊後、近年までの贅沢心理は「経験の顕示」と位置付けられます。バブル崩壊後、90年代から消費スタイルは急速にモノからコトへと移行していきます。重視される評価基準は、著名性や高価格などに代表される客観的な基準から、感性やライフスタイルなど主観的な基準へと変化しました。こうしたトレンドは、「心の豊かさ」(※注2)を志向する意識が急速に高まった1992年以降の時代背景と符合します。(CHART 11参照)
Chart11
メルセデス・ベンツのSクラスやドンペリ(ドン・ペリニヨン)など値段が高いものが一様に尊敬の対象になるのではなく、自動車ではライフスタイルを訴求したRV、ワインでは産地や料理とのペアリングなどといった「コト」が尊敬の対象になってきます。

つまり、贅沢は、値段の高いモノを所有することから、ストーリーやモノづくりの背景などの知識をもち、自分のライフスタイルに応じた心地よい体験を得ることへと変化しました。

「経験の顕示」とは、自分らしいライフスタイルの追求による良質な経験、あるいはそうした経験を可能とする、知識や教養やこだわりなどを顕示することで、一目置かれる存在を目指す心理を示します。

注2. 心の豊かさ⇒「物質的にある程度豊かになったので、これからは心の豊かさやゆとりのある生活をすることに重きをおきたい」
モノの豊かさ⇒「まだまだ物質的な面で生活を豊かにすることに重きをおきたい」

3. 第3世代の心理:”善”の顕示(=ニューラグジュアリー)

第3世代の贅沢心理は「”善”の顕示」と位置付けられます。第3世代の贅沢心理は、ソフトに贅沢を楽しむミレニアル世代の価値観が影響しています。加えて、上の世代以上にSNSに親しんでいるミレニアル世代は情報発信の内容に気を配っていることも、この第3世代の贅沢心理の形成に大きな影響を与えていると言えるでしょう。

例えば、おしゃれなレストランでの食事、美術館での芸術鑑賞、あるいは海外旅行やエアポートでのシーンなどをFacebookでアップロードして「いいね」をもらうスタイル、つまり「経験の顕示」はバブル世代以上の世代に多く見られるスタイルかもしれません。しかしながら、こうした「経験の顕示」は、ミレニアル世代にとっては少々鼻に付くスタイルかもしれません。

CHART 12は、世代ごとの(※注3)のSNSに対する考えを示したものです。
Chart12
ミレニアル世代は(その下のZ世代同様)、「SNSで『いいね』をもらえると嬉しい」一方で、「SNSで自分をアピールしたり、自分の考えを表明する気にはなれない」のも、どの世代よりも高いようです。つまり、そもそもステータスシンボルに抵抗感があることに加えて、SNSでの情報発信という観点からも、ミレニアル世代は「消費の顕示」や「経験の顕示」には慎重なスタンスで臨んでいると言えるでしょう。

※ 注3.本レポートにおける各世代の定義は次の通りです。Z世代(1995-2004年生まれ、2019年の15-24歳)、ミレニアル世代(1980-1994年生まれ、2019年の25-39歳)、ロスジェネ世代(1971-1979年生まれ、2019年の40-48歳)、バブル世代(1956-1970年生まれ、2019年の49-63歳)、ブーマー世代(1945-1955年生まれ、2019年の64-74歳)。MINDVOICE®調査の調査対象年齢が15-74歳であるためZ世代とブーマー世代の年齢幅の一部をカバーしておりません。

その結果、「消費の顕示」や「経験の顕示」に慎重なスタンスを示すミレニアル世代が行きついた贅沢心理は「”善”の顕示」だと推察されます。

「”善”の顕示」は、例えば自分の心理や健康に「善い」もの、あるいは他人や社会のために「善い」ことを実践することだと言えるでしょう。「”善”の顕示」は、ソフトな贅沢を志向するミレニアル世代の価値観に合致し、その性格上尊敬の対象となりえ、しかもSNSで情報を発信しても他人から疎まれるリスクは少ないことだと言えます。

例えば、SDGs(※注4)を行動に移すことは「”善”の顕示」の象徴的な行動と言えるでしょう。世代ごとのSDGsへの関与度を見てみると、ミレニアル世代は(その下の世代であるZ世代同様)SDGsに関心が高い世代であることが分かります。(CHART 13参照)
Chart13
「商品を買う際、環境や差別、動物保護など、社会問題に取り組んでいる企業のものかどうかを確かめて買うようにしている」のは、ミレニアル世代が29.9%と(その下のZ世代の30.0%同様)、その上の世代のロスジェネ世代(24.8%)やバブル世代(22.1%)よりも高い値を示しています。

※ 注4:SDGs(持続可能な開発目標):「持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。」(外務省ウェブサイトより)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

更に、世帯年収が高いほどSDGsへの関与度は増加する傾向にあります。(CHART 14参照)
Chart14
SDGsに代表される「”善”の顕示」は、尊敬を得るための贅沢心理としてミレニアル世代の価値観と合致しているということが読み取れます。

「”善”の顕示」は、欧米におけるトレンドの1つである顕示的慈善(Conspicuous Charity/Conspicuous Giving)あるいは顕示的サステナビリティ(Conspicuous Sustainability)という言葉と類似した心理なのかもしれません。

「”善”の顕示」とは、消費や経験などのあからさまな顕示を行うのではなく、例えば自分が成長できること、自分が気持ちよい状態であること、あるいは人のためになること、社会に役立つことなどを実践することで、一目置かれる存在を目指す心理を示します。

4. 贅沢心理の変遷

上記の通り、日本市場における贅沢の心理は時代によって変化し、贅沢市場においても、多様化が進むことが予想されます。(CHART 15参照)
Chart15

第1世代:消費の顕示

80年代バブル期に中心的な贅沢心理です。より高額なモノを消費・所有すること(顕示すること)で尊敬を得る心理を示します。もちろん、現在でも一定の市場規模があります。

第2世代:経験の顕示

バブル崩壊後の90年代から2010年代の中心的な贅沢心理です。モノを購入・所有することよりも、体験やカスタマイズなどのコトの価値が高まり、自分にあった体験を選別できる知識や教養を持っていること(顕示すること)で尊敬を得る心理を示します。「経験の顕示」は現在最もパワフルな存在だと言えるでしょう。

第3世代:”善”の顕示(ニューラグジュアリー)

ニューラグジュアリー市場を支える心理です。2010年後半辺りから伸長しつつある贅沢心理です。消費や経験などを通じたあからさまな顕示は避け、ソフトに贅沢を楽しむことを志向し、例えば、自分磨きや自己向上、SDGs(持続可能な開発目標)や社会貢献などの”善い”ライフスタイルを実践することで尊敬を得る心理を示します。2020年代には強い求心力をもつと予想されます。

5. ニューラグジュアリー市場の鍵を握る「ジブン贅沢派」

贅沢市場は多様化し一括りにできなくなりました。マーケティング施策やブランド戦略を進める上でこれまで以上に精度の高いターゲット設定が求められます。

CHART 16はターゲット分析のために作成された贅沢心理のタイプ分類です。MINDVOICE®調査の贅沢意識データを使いクラスター分析という統計手法を用いて、生活者を分類したものです。
Chart16
それぞれのタイプの概要は次の通りです。*( )内の数字は構成比
・ジブン贅沢派(7%):「”善”の顕示」の中核。自分らしく生きる人にあこがれる。
・サクセス派(11%):「経験の顕示」の中核。有名人との交流がある人にあこがれる。
・キラキラ派(14%):「消費の顕示」の中核。経済的に成功した人にあこがれる
・品質派(32%):贅沢市場ではフォロワー的存在。年齢層も高い保守層。
・無関心派:(35%):贅沢市場とは乖離。

ニューラグジュアリー市場では「ジブン贅沢派」が鍵を握っています。「ジブン贅沢派」は「華やかな」高級ブランドに共感を抱き、商品やサービスには「自由や解放感」を求めます。SDGsに高い関心を持っていることも特徴的です。

年齢層が比較的若い「ジブン贅沢派」は人口構成比7%に過ぎない存在ですが、可処分所得が最も高いグループです。高額所得者の増加を背景に成長が予想されるニューラグジュアリー市場は企業にとって大きな市場機会です。「ジブン贅沢派」の動向を研究することで、ブランドの高付加価値化、あるいは新ブランドの開発に向けた手がかりが見えてくるでしょう。

資料11:内閣府経済社会総合研究所「1998年度国民経済計算(1990基準・68SNA)」 国内総支出|暦年(1955-1998)
資料12:内閣府経済社会総合研究所「2017年度国民経済計算(2011年基準・2008SNA)」 国内総支出|暦年(1994-2017)

(了)


本リリース調査結果に関するお問い合わせ:
株式会社リスキーブランド
シニアコンサルタント 日原優
TEL 03-5720-5280 FAX 03-5721-6651
Email: info@riskybrand.com


株式会社リスキーブランドについて

株式会社リスキーブランドは、2001年創業のブランドコンサルティング・ファームです。顧客心理分析を強みに、高級車、ビューティ、高級ホテルでの実績をはじめ、戦略作りからブランディング・デザインまでのブランディングサービスを提供しています。
ホームページ : www.riskybrand.com

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